「俺と岡本、今から現場に行くから」


「分かりました」


「何かあったら携帯に連絡くれ」


「はい。行ってらっしゃい」


「いや…。その前にちょっと電話…」


「行かんのかい!」


立ち上がろうとしてすぐに腰をおろした俺を見て、雑巾を机に叩きつける。

大阪出身の彼女は事あるごとに色々なツッコミをしてくれるので、男だらけの盗犯係内の潤滑(じゅんかつ)油のような存在だ。

席に座って電話を掛けている間も、刺さるような視線を投げ掛けてくる。

その姿を確認し、手で追い払う仕草を見せると俺を睨みつつ雑巾を洗いに行った。