「まだ着かないんですか!?」


「そう急かされてもねぇー。今日はクリスマスだから、どこも混んでて動かないよ」


時刻は零時十五分。

イブも終わり、日付も変わってしまった。


どこだ!

どこに居る?


何度杏里紗のスマホに電話をしても一向に出ない。

気持ちだけが焦り、普段なら考えられる次の一手が分からなくなってしまった。


「もういい。ここで降ろして」


「え…。でも、ここ道の真ん中…」


「動かないんだろ!ここで降りる!」


メーター表示を切り替えようとする運転手に、後ろから投げるように一万円札を手渡す。