「あ!何で指輪してないんだよ」


絡ませた手を持ち上げてみると指輪がない。


「え…。だって、あんなに高価な指輪…毎日してたら傷付くじゃん。失くすの怖いし」


……。

指輪の心配かよ…。


「じゃあ、早く結婚式して結婚指輪にするか」


「あたし一人のために結婚式なんかしなくていいのに…」


やけに『しなくていい』と言う杏里紗。


「杏里紗は、結婚式したくないのか?」


俺の問いかけにしばらく固まって動かなくなる。


「俺が、杏里紗のウエディングドレス姿見たい」


そう言うと、黙ったまま頷いてくれた。