「因幡さんさー、んっ…」


唇が塞がれる。


「名前で呼んで」


名前…。

って……『透』?


呼び捨てなんて、付き合ってるみたいじゃん。


「とっ…透?」


「何で疑問形なんだよ。人には『杏里紗って呼べ』って言っといて」


「そっ、そんな言い方してないし!」


「あんまり変わんねーだろ」


あたしの頬を滑る指を握ると、因幡さんの方へ引っ張られ優しくキスをされる。

手の甲に口付けながら、薄目であたしを見る因幡さん。

その仕草に、また胸がギュッと締め付けられる。

どこまでも甘くて長い時間に心も体も満たされて、この幸せがこのまま続けばいいと願わずにはいられなかった。