『プッ』と軽くクラクションが鳴る。

音の方に顔を向けると、白のベンツの中から安藤が手を挙げた。


「ずいぶん早かったな。電話の感じだとまだ来ないかと思った」


「こっちから呼び出してるのに待たせるの申し訳ないしね」


助手席に乗り込むと、ハンドルに両肘を預け俺を見て笑う。


「道交法違反してないだろうな」


「ご想像にお任せするわ。天気もいいし、海にでも行きましょうか」


車が動き始めた。

こうやって当たり前のように安藤の車の助手席に乗るのも、杏里紗に対して申し訳なく思える。