「…分かり…ました…。だけど、最後に因幡さんに会いたい…。明日にはちゃんと行くから…。だから今日だけは…」


「…分かったわ」


大きく息を吐く安藤さん。


「明日の朝迎えに来るから。荷物は後から運ぶから、そのまま出てきてちょうだい。…これ、渡しとくわね」


渡されたのは普通の携帯電話。


「そこに連絡するから、それが迎えの合図だと思って」


「…はい」


「それじゃ、そろそろ行くわ。あんまり遅くなったら彼が不審に思うだろうし。じゃあまた明日ね」


バタンと音を立てて閉まるドア。

さっき因幡さんが出て行った時とは違って、この世の最期を思わせる冷たい音に聞こえた気がした。