しばらくして因幡さんが部屋に戻ってきた。


「悪い。ちょっと出掛けてくる」


「……安藤さんのところ?」


胸の奥が熱くて苦しくて、自分が自分じゃないみたいだ。


「…ああ」


「行っちゃヤダ…」


因幡さんの服を握り締めた。


「お前が心配するようなことは何もないから」


あたしの腕を掴み、服から離そうとする。

その動きに反するように因幡さんにしがみついた。


「――…ヤダ。行っちゃヤダ……」


自分の声が震えている。