「ちゃんと自分で起きろ」


危なかった…。


杏里紗と居たら、つい気を許してしまいそうになる。


「…分かった」


悲しそうな顔になるのを見るのも、正直胸が痛い。


……。


杏里紗が風呂に向かったのを確認し、その場にしゃがみ込む。


……もう、結婚も恋愛もしないんじゃなかったのかよ…。


右手でおでこを擦り、ため息を吐いた。


「あたしのせい?」


いつの間にか戻ってきた杏里紗が、背後から俺を抱き締める。

不覚にも、まったく気が付かなかった。