「因幡さん」


「ん?」


玄関ドアの前で向き合う。

立ったまま、目の前でこうやって見上げるのは初めてかもしれない。


「……色々考えたけど、やっぱり因幡さんのこと……好き…」


因幡さんのシャツを握り締める。

『気持ちは受け取れない』

そう言われたはずなのに。

好きの気持ちが溢れて、心臓が痛いぐらいに騒いでいる。


「……初めて人を好きになったの…。この想い、どうしたらいいか分からない」


因幡さんの腰に両手を回してしがみついた。

引き剥がされると覚悟していたのに、因幡さんは何もしてこなかった。