走るような靴じゃないのに……。


夢中になって走っていたから、足元に視線を落とすまで気が付かなかった。

かかとのストラップも引っかけず、こんなプラプラな状態のサンダルでよく走れたもんだ。


「はぁ……、―――っ…」


頑張って息を整える。


「ふーっ…」


上体を伸ばし、首を後ろに倒す。

こんなに必死になったのはいつ振りだろう。

少なくとも、こうやって頑張ることさえ忘れていた。


因幡さんと出会って、少しは変われたのかな…。


人が行き交う日中の街。

誰もあたしを気に留めることもなく、脇目も振らずに前だけ向いて歩いている。