バカ!

因幡さんのバカッ!


次から次へとこぼれ落ちてくる涙。

因幡さんがあたしに興味がないことなんて、一緒に居れば分かった。

それでも、少しはあたしのことを気にしてくれたらいい。

そんな気持ちがあったのに……。


『杏里紗の気持ちは受け取れない』


ハッキリと否定されてしまった。

他の男だと感じたことのないモヤモヤした気持ちは『好き』ってことに初めて気が付いたのに。


どれだけ走ったのか分からない。

息が苦しくなり、走ることもできなくなって、ようやく足を止め両膝に手をついて深呼吸をする。