「終電終わる前に帰るからな」


『はいはい。じゃあ、いつものお店ね』


そう言って電話が切れる。


いつもの店。


採用されて初めて同期皆で飲みに行った時、意気投合した安藤とたまたま寄って二次会をしたバー。

何かあればそこで飲みながら話をしている。


……アイツ、晩ご飯どうしてるんだ…。


頭に浮かんだのは杏里紗のこと。

何も持たない杏里紗と接触しようと思ったら、自宅に帰るしか方法はない。


……なるべく早く帰るしかないか…。


安藤が指定したバーに足を向けた。