それは彼の英雄願望からくる嫉妬心からなのかもしれない。さらに理由を付け加えると彼の妹アルビナス殿下もまた私たち姉妹と同様に聖女なのだ。
この国には聖女が三人いて、その中でも最も強い力を持つアルビナス殿下はエルドラド殿下を差し置いて戦場においても多大な戦果を残している。
彼が自分の妹であるアルビナス殿下の力に嫉妬しているのはゲームの中でもはっきりと語られていたので、まごうことなき事実である。
「君には魔王の後継者ということだけでなく、あの可憐なシェリアを聖女の道に引き込んだ罪もある。俺はあの子を聖女というしがらみから解放して、保護してやるんだ」
「シェリアは別に私が――」
「黙れ!」
「あっ!?」
そのひと振りで鉄格子が砕け散る。
ガラガラと音を立てて崩れる牢獄を見て、私はエルドラド殿下の剣の腕が超一流だということを思い出した。
英雄になりたいというのは口だけではなく努力もしているからこそのセリフらしい。
「あの子は本当は慎ましい子なんだよ。聖女などならなくていい子なんだ」
「それは殿下の思い込みです。あの子は自らの意思で――」
「黙れ! 邪悪なる魔王の後継者め! せめて、この英雄の剣で成敗してくれる!」
この人は本気だ。その剣で本当に私の命を奪おうとしている。
ええーっと、どうやって助かったの? だって、私はゲームのラスボスだよ?
こんな牢獄で死ぬなんて聞いていない。だから私はさっきまで彼が剣を抜いても、本気で殺そうとするとは思っていなかった。
死にたくない。確かにそう思っている。
なんとか助かりたい。その方法を必死で私は考えていた。
(でも、助かろうとするのが正しいのかしら)
魔王の血が完全に目覚めると大好きな妹と死闘を演じなければならない。
それは私にとっても悲劇だが、彼女にとってはもっと悲劇だろう。
(いっそのこと、ここで死んじゃったほうがいいかもしれないわね)
前世では訳もわからぬうちにトラック事故に巻き込まれて死んだ。生きている意味もなにもわからないうちに死んでしまった。
今度は世界のために、最愛の妹のために死ねるのだ。
ラスボスとなり、世界を敵に回して、妹に殺される未来を避けられるならそのほうがマシと言えるではないか。
「承知いたしました。私を殺してください。殿下……」
この国には聖女が三人いて、その中でも最も強い力を持つアルビナス殿下はエルドラド殿下を差し置いて戦場においても多大な戦果を残している。
彼が自分の妹であるアルビナス殿下の力に嫉妬しているのはゲームの中でもはっきりと語られていたので、まごうことなき事実である。
「君には魔王の後継者ということだけでなく、あの可憐なシェリアを聖女の道に引き込んだ罪もある。俺はあの子を聖女というしがらみから解放して、保護してやるんだ」
「シェリアは別に私が――」
「黙れ!」
「あっ!?」
そのひと振りで鉄格子が砕け散る。
ガラガラと音を立てて崩れる牢獄を見て、私はエルドラド殿下の剣の腕が超一流だということを思い出した。
英雄になりたいというのは口だけではなく努力もしているからこそのセリフらしい。
「あの子は本当は慎ましい子なんだよ。聖女などならなくていい子なんだ」
「それは殿下の思い込みです。あの子は自らの意思で――」
「黙れ! 邪悪なる魔王の後継者め! せめて、この英雄の剣で成敗してくれる!」
この人は本気だ。その剣で本当に私の命を奪おうとしている。
ええーっと、どうやって助かったの? だって、私はゲームのラスボスだよ?
こんな牢獄で死ぬなんて聞いていない。だから私はさっきまで彼が剣を抜いても、本気で殺そうとするとは思っていなかった。
死にたくない。確かにそう思っている。
なんとか助かりたい。その方法を必死で私は考えていた。
(でも、助かろうとするのが正しいのかしら)
魔王の血が完全に目覚めると大好きな妹と死闘を演じなければならない。
それは私にとっても悲劇だが、彼女にとってはもっと悲劇だろう。
(いっそのこと、ここで死んじゃったほうがいいかもしれないわね)
前世では訳もわからぬうちにトラック事故に巻き込まれて死んだ。生きている意味もなにもわからないうちに死んでしまった。
今度は世界のために、最愛の妹のために死ねるのだ。
ラスボスとなり、世界を敵に回して、妹に殺される未来を避けられるならそのほうがマシと言えるではないか。
「承知いたしました。私を殺してください。殿下……」
