ラスボス聖女に転生してしまいました~婚約破棄され破滅する運命なので、生き延びるため隣国で錬金術を極めます~

 古城を思わせる外装から予測したとおり、食堂はかなりの広さだった。おそらく軽く数十人が食事できるだろう。

 それにおしゃれなシャンデリアに燭台(しょくだい)。椅子やテーブルもアンティークの素敵なデザインのものだった。

「お口に合うかどうかわかりませんが」

「どうも。あっ、可愛い。このティーカップと同じお花が飾られているんですね」

「おやおや、よく気づきましたねぇ。さすがは聖女様。大した観察力です」

 手渡されたティーカップには黄色と赤色の薔薇(ばら)が描かれていた。

 そしてテーブルを彩っているのも花瓶に活けられた同じ色の薔薇。

 このさり気ないおしゃれな感じ、私は好きだなぁ。

「それに紅茶もとっても美味(おい)しいです。なんだか癒やされるような不思議な感覚ですね」

「落ち着くでしょう? リラックス効果のあるハーブを入れましたから」

 対面で座りながらお互いに紅茶に口をつける私とレオンハルト様。

 本当に不思議なくらい気持ちが静まる。魔王の闇の魔力を抑えていたのだが、今はそれが必要なく感じられる。

「えっ? あれ? 私の魔力が……」

「おっと、そちらにも気づかれましたか。私の調合した魔力封じのハーブも少々。なにやらあなたが自らの魔力でもう一つある自らの魔力を抑え込んでいるように見受けられましたので、その悩みのもとを封じさせていただきました」

 この人、なんでもありなの!?

 どうやったのかわからないが、私が闇の魔力を光の魔力で抑えていることまでお見通しだとは……。

(でも本当に楽になったわ。今日は久しぶりによく眠れるかも)

 こんなにもあっさりと魔力を封じられたのはある意味怖かったが助かった。

 この状態なら確かにぐっすり寝ても大丈夫だ。

「効果は半日ほど続きますから、ゆっくり眠れますよ」

「あ、ありがとうございます……」

「ふふ、不眠というのは辛いですから。ゲストをもてなす者として当然のことをしたまでです」

 どこまでも紳士的に私のことを気遣うレオンハルト様。

 やっぱりゲームのリルアもこのような彼の人間性に触れて、すべてを話したのかな。

 その気持ちはなんとなくわかる。

 それにこの方は設定上でも私の知っている中でもとびっきり有能な人。

 相談すればなにかしら見えてくるかもしれない。