同じことをしようと思ったら、どうしても腕になんらかの影響が起こりうるはずなのだ。
「魔法ではありません。錬金術ですよ。金属だけに影響を及ぼすように調整して術を放っているのです」
「こ、これが錬金術……?」
ゲームではアイテムの合成くらいにしか使われていなかった錬金術という力。
どうやら私はそれを随分と見誤っていたらしい。
とても繊細でかつ圧倒的な力。もっともそれは錬金公爵と呼ばれる彼だからこそ為せる業なのかもしれないが……。
「さぁ、参りましょう。リルアさん」
「えっ?」
「僕の屋敷にです。少し古いですが、それなりに風情があっていいところなんですよ。きっと気に入ってくれると思います」
まるでエスコートするようにレオンハルト様は会釈して手を差し伸べ、彼の用意したという馬車へと案内する。
うーん、どうしようかな。ゲームのリルアはこの人を信頼して事情を話したはず。
それならば私はどうする? 同じ立ち振る舞いをすべき?
でも、それでも、結局リルアは魔王になってしまっていた。
やはり黙って様子を見るのが正解なのだろうか。
「大丈夫ですか?」
「あ、はい。な、なにがでしょうか?」
「いえ、人質としてこちらの国にやってきてさぞかし不安に感じられるのはわかるのですが、なにか決断を急がれているような表情をされていましたので」
いやいや、どんな表情よ。それ……。
心の奥の思考まで見透かされてしまい、私はこの錬金公爵レオンハルト・オーレンハイムという人物の恐ろしさを感じた。
この方は優れた錬金術師というだけではない。この短いやり取りだけでそれはわかる。
「なにかございましたら、お気軽にご相談を。大抵の悩みなら解決する自信がありますから」
「あ、ありがとうございます」
サラッと笑顔で一番ほしい言葉を投げかけるレオンハルト様。
迷うわね……。ゲームのリルアがこの方を信頼して話したバックボーンはなんとなく掴めたけど……、それでも話すことが正しいのかどうかはまだわからないし……。
結局私は馬車ではなにも話せなかった。
そしてそのまま数時間、馬車は進み続けてようやく私の長旅は終わる。
この日から私の人質生活が始まった。
◆
「長旅ご苦労さまです。いやー、お疲れでしょう。僕も馬車で長時間は腰や肩にくるので苦手なんですよ」
「魔法ではありません。錬金術ですよ。金属だけに影響を及ぼすように調整して術を放っているのです」
「こ、これが錬金術……?」
ゲームではアイテムの合成くらいにしか使われていなかった錬金術という力。
どうやら私はそれを随分と見誤っていたらしい。
とても繊細でかつ圧倒的な力。もっともそれは錬金公爵と呼ばれる彼だからこそ為せる業なのかもしれないが……。
「さぁ、参りましょう。リルアさん」
「えっ?」
「僕の屋敷にです。少し古いですが、それなりに風情があっていいところなんですよ。きっと気に入ってくれると思います」
まるでエスコートするようにレオンハルト様は会釈して手を差し伸べ、彼の用意したという馬車へと案内する。
うーん、どうしようかな。ゲームのリルアはこの人を信頼して事情を話したはず。
それならば私はどうする? 同じ立ち振る舞いをすべき?
でも、それでも、結局リルアは魔王になってしまっていた。
やはり黙って様子を見るのが正解なのだろうか。
「大丈夫ですか?」
「あ、はい。な、なにがでしょうか?」
「いえ、人質としてこちらの国にやってきてさぞかし不安に感じられるのはわかるのですが、なにか決断を急がれているような表情をされていましたので」
いやいや、どんな表情よ。それ……。
心の奥の思考まで見透かされてしまい、私はこの錬金公爵レオンハルト・オーレンハイムという人物の恐ろしさを感じた。
この方は優れた錬金術師というだけではない。この短いやり取りだけでそれはわかる。
「なにかございましたら、お気軽にご相談を。大抵の悩みなら解決する自信がありますから」
「あ、ありがとうございます」
サラッと笑顔で一番ほしい言葉を投げかけるレオンハルト様。
迷うわね……。ゲームのリルアがこの方を信頼して話したバックボーンはなんとなく掴めたけど……、それでも話すことが正しいのかどうかはまだわからないし……。
結局私は馬車ではなにも話せなかった。
そしてそのまま数時間、馬車は進み続けてようやく私の長旅は終わる。
この日から私の人質生活が始まった。
◆
「長旅ご苦労さまです。いやー、お疲れでしょう。僕も馬車で長時間は腰や肩にくるので苦手なんですよ」
