彼の母は、王妃の息子である王太子に成り代わろうと企てていたのだが、当のランドールはそれに乗らなかった。


 計画が未遂に終わったこと。
 これ以降ランドールという駒を失った側妃に付くような貴族が現れないだろうことから、国王陛下はクロエ妃に対して、死罪ではなく離縁という罰を与えただけだった。


 ホナミだった頃に歴史の授業で教わった古今東西のトップの継承を巡る骨肉の争いは、大抵がそれをひっくり返そうとした方が破れて、悲惨な最期を迎えている。



 ロザリンド同様に、それを知るランドールは無用の兄弟の争いを避けようとして、己の支持者を失くすように動いていたのではないだろうか?

 自ら遠国の後宮に赴いたのは、ランドールが持つ美貌と聡明な頭脳、それに加えて21世紀の知識があれば女王の寵愛レースに勝てる勝算があったからではないか?



 既に出国したランドールに確かめる事はもう出来ないけれど。
 享楽家で刹那的だと思われていた第2王子殿下は全て計算の上で冷静に動いていた、と王太子殿下の婚約者アビゲイルからも見えていた。