ロザリンドもそこを突っ込むことなく。
 その日はアビゲイルとお互いに決定的な話をすることはなかった。


 アビゲイルに貴女も転生したのか、と聞くことがどうしても出来なかった。


 ヒロインのミシェルも、モブキャラのロザリンド(自分) も、ある日いきなり記憶が甦ったのだ。
 もしかしたら、転生したのは自分達2人だけではないような気はしていた。


 あのバスに乗っていた50人弱の人間が全員亡くなってしまったのか、知る方法はないが。
 何人かは2人と同様に残念ながら命を落としてこの世界に転生している可能性は高かったからだ。


 既に前世の記憶が戻っているのに、自分と同じように口をつぐんでいる者が何人も居るのかも知れない。
 それはずっと考えていたことだった。


 ロザリンドがそれを確信したのは、ランドール王子殿下の存在が大きかった。
 改めて彼の行動を振り返ると、彼も転生者だったのかも……、と思えた。