王国の大事な行事であるデビュタントを汚した第2王子ランドールは中東の砂の国アラカーンの
女王ファティア・アブド・サリ・アラカーンの
後宮へと送られた。


 まだ貴族学苑に在籍していた17歳の王子を。
 15歳も年上のファティア女王の寵愛を競う後宮に向かわせるなんて、と彼の母である側妃は半狂乱になって国王陛下に取消を縋ったが。


 このままルーランド王家が所有する王都から遠く離れた寂れた離宮に何年間か幽閉されてしまうよりは、アラカーンで新しい人生を切り開けるかもしれないとランドール本人が選択したのだ、と聞かされて、側妃クロエは泣き崩れた。


 第2王子を庇う貴族はひとりも居なかった。
 何故なら側妃が王太子を廃する夢を見始めた頃に第2王子の支持を表明していた貴族の令嬢達を、ランドールはつまみ食いをして捨てていたからだ。

 自分の味方になるものを減らそうとするかのような振る舞いを続けていた彼は、自ら茨の道を突き進んでいた……のかもしれない。