ロザリンドが手足をバタバタさせて腕のなかで暴れだしたので、ランドールは驚いた。
 大抵の令嬢は自分に抱かれると、うっとりと目を閉じた。
 少しだけ抵抗するように睨む令嬢も、抱き上げると力を抜いて諦めた。


 大人しくて今まで目立たなかった、子供に毛が
生えたような侯爵令嬢が見せた全身全霊の抵抗に
ランドールは驚いたが、歩みを止めようとは思わなかった。

 自分の私室に連れ込んで、ベッドに押し倒したら女なんて直ぐに思い通りになる。
 己の立場や容姿に絶対の自信を持つどうしようもない第2王子、そんな皆からの陰口も当然知っている。


 こんな事を続けていれば、いつかは父の国王陛下から何らかの罰を与えられるだろう。
 皆が期待を込めて、その日を待ちわびている。


 だが、女遊び程度では命までは取られない。
 恐らく玉座に座る資格なしと周知されて、継承権を取り上げられるだけ。 


 その罰を受ける事こそがランドールの願いだった。
 彼は側妃である母の野望の駒にだけは、なりたくなかったのだ。