わっとしたざわめきや、何人かの短い悲鳴が周囲でしていたのは聞こえていたが、父母や義兄の
様子が見えなくてわからない。


 ダンスが終われば、バルコニーへ誘い出されるだろうけれど。
 父と義兄が母の体調不良による帰宅を願い出て、王太子殿下とウェズリーがそれを取り成してくれる段取りになっていたのだ。


 まさか、ダンスの途中で、皆が見守っている中で。 
 いくら第2王子であっても。
 こんな無体な真似をするとは、思ってもみなかった。


 自分がランドールに抱かれてどこかへ連れていかれそうになっていること。
 それが成功したら、自分が汚されてしまうこと。
 それだけはわかっている。


 絶対にそんなのは嫌だ!
 甘い言葉で誤魔化していても、これは暴力だ。
 無理矢理に連れ込まれるなんて、暴力以外の何物でもない!


 私が我慢したから、シュウジが。
 エスカレートしてしまったのは否めない。
 最初に暴れて、力で敵わなくても。
 それで余計に殴られても。
 抵抗すれば、私は私を諦めずにすんだ。
 シュウジと戦えば、私は私のままでいられた。