次兄がわざと仕出かしたことを、周囲の大人達は言葉にはしなかったが察していたようだった。

 オスカーの傷が癒えると、当初の予定より早く彼は王都のコルテス侯爵家に引き取られることになった。

 それと同時に次兄に対しても。
 コルテス侯爵の圧力で、兄は領地を離れて辺境の騎士団に入団させられることになった。


 わずか15歳の入団に、父母は泣いたが。
 本人である兄は泣かなかった。

 オスカーを自ら迎えに来たコルテス侯爵の表情を見て、自分は無事では済まない、と覚悟していたようだった。
 オスカーさえ除いたら俺が代わりに……等と考えたのは、ガキの浅知恵だったのだ、と気付いたからだ。


 こうして、オスカーの実家ウェイン家は長男のみが残ることになったが、侯爵の怒りが溶ければ次兄はマーカス伯領に戻れるだろう。
 それまでに過酷な辺境警備で心身を鍛えられていれば、の話だが。
 両親はそう望みをかけた。

 
 ……だがそうはならないことを、三上であった
オスカーはわかっていた。