夜会の支度を終えて、2階から玄関ホールへと降りる階段の下で待っていてくれたオスカーが
『すっかりレディーになったね、もう子供扱いは出来ないな』と真剣な口調で言ってくれたので、改めてロザリンドは自分の気持ちに気付かされた。

『オスカーを、誰にも渡したくない』と。


 母が次期当主になるオスカーの縁組を急いで整えようと躍起になっているのは、そんなロザリンドの気持ちを察しているのかもしれない……
 ロザリンドはドレスのレースを整えながら、母の心情に思いを巡らせていた。


「今夜の私は大人に見えますか?」

「さっきも言ったけれど、とても綺麗だよ。
 美しいレディーの君が妹で、とても誇らしいよ」

「……」

「今夜は多くの男が君にダンスを申し込むだろうね?」


 にっこり笑うオスカーの笑顔が恨めしい。
 私は貴方以外の男なんて欲しくないのに、と。
 
 ロザリンドは伸ばしたレースをくしゃっと握り
しめた。