だが婚約は破棄されて。
 準備されていた小物類はキャンセルした。
 例えそれが高額になろうと、ウェズリーの事を
思い出させるドレスもろともキャンセルするつもりだった母を止めたのはロザリンド本人だった。
 


『ドレスはそのままで小物の色だけ変えさせて』

 そのように頼む愛娘に冷静になった侯爵夫人は頷いた。
 確かに今から怒りに任せてドレスをキャンセルしたら、デビュタント用の純白のドレスは間に合わない。


 ロザリンドは急遽エスコートしてくれることになったオスカーの瞳の紫色を身に付けたい、と内心では願っていたが、さすがにそれを口に出す事は憚られたので我慢した。


 それで誰に対しても自分の色だから、と言い張れるような菫と紫の中間色のもので揃えることにしたのだった。
 微妙かつ、絶妙な薄紫色の小物を選んでいく娘に母は何も言わなかったが。