他の皆は優しいけれど、甘い言葉などくれなかったし、ずっと周りでちやほやしてくれるでもなし。


 ミシェルであった時はそれを疑問に思わず、請われるままウェズリーの恋人になったけれど。
 それもよくよく考えたら、彼には婚約者が居て。


 婚約に対する不満も、彼女の悪口も彼は言わない。
 その婚約も解消するのか、しないのかさえも。
 彼ははっきりとふたりの将来について、口にはしなかった。


 そんな2番手の扱いをされても。
 ミシェルであった時には、それが普通だと思っていたのだ。
 自分ごときが侯爵令嬢に取って代わって、ウェズリーの正妻になるなんておこがましいと。



 でも、もうそれは記憶が戻る以前の話。
 今ならもう我慢しない。
 アヤカは、この先のストーリーを知っているのだから。


 ちょっとイケメンで優しいだけのウェズリーは、どっちともうまくやりたい二股男だ。
 そんなヤツの恋人なんて、すっぱりやめてやる。

 ミシェルには王太子との恋が待っている。