ホナミが心を込めて『白百合のよう』『妖精の
よう』と、形容したヒロイン、ミシェルの顔は
醜く歪んでいた。


「お嬢様ぶっちゃって、笑わせないでよ!
 私は元々はセレブなんだから!
 モブキャラのくせに、ヒロインに張り合うつもり?」


 ミシェルがはっきりと、自分をヒロインと口にして怒鳴ったので。

『お里が知れるわね』と、誰かが言い。
 周りで嘲笑がさざ波のように拡がっていった。


「ご自分でヒロインです、って」

「ロマンス小説か、舞台か、どちらの?」

「こんな下品なヒロインなんて、存じませんわ」

「平民専用の芝居小屋じゃありません?」


 さすがに男子生徒は静観しているだけだったが令嬢方が口々にミシェルを貶めているのを聞くとロザリンドの心の何処かがチクリと傷んだ。