このひとがヒロインなんだ、私の考えたヒロインがそこに居る!


 場所は貴族学苑の昼休みの食堂。
 ロザリンドが入学して3週間が経過していた。


 ロザリンドが3人の友人とランチを取っていたテーブルのすぐ傍に、ミシェルが座ったのだ。
 友人達がおしゃべりをやめて無言になった。



 彼女は……ミシェルは1人だった。

 自分が創作したヒロインが現実に目の前に現れて、ロザリンドは感動していた。 
 彼女は婚約者を奪った女だったが、それは自分がそう設定したからで、ミシェルに対しては怒りなどなかった。


 周囲の皆からは、この邂逅が興味津々で見られていることはわかっていた。
 

 ミシェル・フライ男爵令嬢のせいで、ロザリンドの婚約が破談となったことは有名で。
 だからこそ、因縁のふたりが顔を合わす瞬間を誰もが楽しみにしていると思われた。