王太子殿下の生誕記念夜会の一件に関しては、ロザリンドは何も知らされていなかったので、初耳だった。


「……私が頼んだ?」

 王族になるな、なんて頼んだ覚えはなかった。
言われていることがわからなかった。
 オスカーの隣に座るグレンジャーの赤い瞳が面白そうに輝いている。
 黙って微笑んでいるオスカーの代わりに、グレンジャーが答えた。


「あの日さぁ、朦朧としていたんだろうけど、私は黒髪萌えなの、ずっと黒髪でいて、って何度も繰り返してたよ?
 王族になったら金髪に戻さなきゃ、だろ?
 恋人にあれだけ言われたらねぇ~
 オスカーは一生、黒髪のままでいるそうだよ」


  ◇◇◇


 グレンジャーは帰る前に、ロザリンドに尋ねた。


「ホナミさん、
 黒髪が好みなのはわかったけどさぁ、
 何でオスカーに中途半端な魔法がかけられる事になったの?」


 ロザリンドはオスカーと目と目を見合わせた。
 そしてふたりは笑った。