王城からの知らせを受け取ればそちらを優先しなくてはならず、自由に動けなくなる。

 多分まだベッドの中で熟睡中の親父殿を起こすのは至難の業だが、思い切りたたき起こすのも面白い。


 わずか15分足らずでグレンジャーは親父殿を連れてきた。
 オルコット長官の髪は乱れ、服装のボタンはかけ違っていて、睡眠不足の目は血走っていた。


「殿下はこの場で、お待ちください。
 私と息子で行って参ります」

「この腕を切り落としてから、ですか?
 私はこのリボンは、絶対誰にも渡しません!」


 そう言うオスカーの瞳を見てカーネル・オルコットは彼も一緒に連れて飛ぶことにした。
 一度決めたら絶対に譲らない、そんな性格の亡き妹の面影が確かに見えたのだ。

 妹の忘れ形見と義理の息子の暴走の責任は、全て自分が負う、と覚悟を決めた。


 妹のケリー・アンには何もしてやれず。
 田舎に下る甥にも何も出来なかった。
 自分に出来たのは、その身を守ってやりたい、と魔法をかけただけ。