オズワルドは王太子派の人間で、彼は最初から
ロザリンドの誘拐が目当てだったのか。

 自分の存在がオスカーを追い詰める手段にされてしまう……
 今の自分に出来ることは何なのか、ロザリンドは必死に考えた。


 目的地に着いたのか、荷馬車は停車した。
 荷台に転がされていたので、身体のあちこちが痛かった。


 ◇◇◇


 ロザリンドの身体を担いで男は小屋に入った。
 王都の外れの森の奥、木こりや猟師が休憩に使用する簡単な造りの小屋だ。


 仮面祭りが終わると、翌週から初冬の狩猟シーズンが始まる。
 誰かがその前に軽く暖炉や煙突を掃除していたので、問題なく使用することが出来た。
 たなびく煙からこの小屋をたどられることは、男の想定内だ。
 どうせここには少しの時間しか居ないので、平気だった。


 今朝、簡単に顔を合わせたオスカーの護衛騎士が訝しそうに自分を見ていた。
 髪を赤毛に染めていたので、はっきりとは認識出来ていなかったか、それとも。