意識を取り戻した彼女にオズワルドは目隠しと
猿轡を咬ませた。
 目を隠される前、一瞬見えた彼の瞳は今朝と違い光を失っているように見えて。
 初めて自分は殺されるのかもしれない、と恐怖した。


 前世の記憶を得てからのロザリンドの中では、
この世界は物語の世界で。
 推しのオスカーに愛されて、これからはラブ展開が待っているのだ、とどこかで登場人物を演じているようなフワフワした心地がしていた。


 しかし、こうして身体の自由を奪われて、視覚も失って。
 初めてこれが現実の出来事なのだ、と思い知らされた。
 原作者だからと言って、この窮地を無事に生き延びる確証など無い。


 どこを走っているのか見当もつかないが、寒くて震えが止まらない。
 ルシルは直ぐにオスカーに事の次第を伝え、父は侯爵家の持つ全ての力を駆使して、行方を追ってくれているのだろうか。