今朝オズワルドと名乗った男に、ロザリンドは
拐かされた。


 彼が苦しんでいるとルシルから聞かされて心配で馬車まで走った。
 後からルシルが待つように叫んでいた気がしたが 自分のせいで彼がこんな目に合わされたのだ。
 それを自分で確認して、人任せにしてはいけないと思ったから。


 馬車の扉を開けた途端、薬品を染み込ませた白いハンカチで口を覆われて彼女は気を失った。

 そして今。
 無理やり起こされて荷馬車の荷台に放り込まれた。


 乗り捨てられた侯爵家の馬車の中には、ロザリンドと同様に気を失って拘束されていた御者のマルコムが転がされていた。
 彼は命までは奪われていないようで安心した。


 この物語の中では、例えモブであろうとマルコムは死んで欲しくないし、悪役であろうとオズワルドに殺人を犯して欲しくなかったからだ。