ロザリンドはアビゲイルが言う『これから』を
想像して、安易に王家を絡めた出生の秘密、なんて設定した自分の愚かさを呪った。

 ヒーローとヒロインを巡る人間模様、彼等を襲う過酷な宿命等、それらを嬉々として複雑にしてやろうとした……

 後悔が波のようにロザリンドの胸に押し寄せる。


 アビゲイルはオスカーには、ロザリンドがホナミだと教えていない。
 それはロザリンド自身がいつ打ち明けるか決めればいいから。
 だがその手助けはしたかった。


 ホナミちゃんはあのDV男のせいで、悪意に対しては敏感で臆病で。
 その分、好意を向けられても鈍感だし、素直に受け取ることが出来ない。
 悪い感情の矛先が自分である、と過剰に受け止め過ぎる。


「オスカーはミカミさんだったわ、今朝確認したわ」

「……」