「チカ……先生、なんですか……」

「そうですよ、私もアビゲイルに転生したんです。
 アーノルドから王族専用室を使用する許可を
得ています。
 そちらの方でお話出来るかしら?」

「……」


 オスカーの返事を待たず、アビゲイルは誰に向かって言ってるのかわからないが、廊下の天井に向けて話しかけた。

 オスカーは王家の影は時代劇の忍者のように天井裏に潜んでいるのかと思ったが。
 日本人のホナミが考えた世界だからな、と校舎の構造等について余計な事は考えないようにした。


「私がオブライエン様とお話することは王太子殿下も御存じの事です。
 これから貴方がお聞きになる会話は、まず殿下にご報告して。
 そのご指示に従ってくださいませ。
 この先の事をお考えでしたら、どなたかより殿下のご意向を優先されることをお勧め致します」


 小さいけれど良く通る声で、アビゲイルは王家の影の耳に届くように話しかけた。
 それは以前にも聞いた彼女の、命令する事に慣れた声であった。

 どなたかとは……王家の、国王陛下の事かと思われた。