それを見ていたオスカーが不快そうに端整な顔を歪めていた。
 彼の様子に気付いたロザリンドは慌てて手を引っ込めた。
 オスカーと過ごせる時間が減らされた今、些細な事であっても、彼の機嫌を損ねたくない。



「ランチは一緒に取ろう。
 昼休みに教室まで迎えに行くから待ってて」

 各々の馬車に乗る前、オスカーが優しく耳元に囁いてくれた。



 
 昨日から始まった恋だ。
 お互い一番気持ちは盛り上がっている。
 昨夜はおやすみのキスだけ交わした。
 まだ15歳のロザリンドとはそれ以上、事を進めようとオスカーは考えていないようだ。


 身体が繋がることで相手への想いが強くなることを、26歳のホナミは知っているが。
 早く関係を深めようと焦ってはいけない。

 私と結婚する、と彼は信頼している友人に宣言してくれた。
 今朝は両親に伝えられなかったけれど。
 今夜オスカーはふたりに、はっきりと言ってくれるはずだ。


 例え、彼が王族になったとしても……
 侯爵家の娘なのだから、私には妻になる資格は有る。


 不安がモヤモヤと胸に渦巻いていたが、ロザリンドはそれを認めたくなかった。