今さらどの面を下げて、自分が原作者だ、と打ち明けられるだろう。



 その告白を引き伸ばせば引き伸ばすほど、今よりややこしい事態になる可能性もわかっていながら。
 ロザリンドはしばらくは隠し通す事にしたのだった。


 それ程、オスカーから嫌われるのが怖かった。
 私は目先の保身しか考えられない女だ、とホナミは自覚していた。


 ◇◇◇


 今日からオスカーの卒業まで、登下校は別の馬車を使用することになった。

 王城から侯爵家に貸し出されたのは、ルーランド王家の紋章こそ付いていなかったが、壮麗かつ
頑丈な仕様の物であり、それを操る御者も武道の心得がある者らしい。

 本来なら護衛騎士は傍らを馬で並走するのだがそれで登校はあまりにも目立ち過ぎるので、護衛騎士は同乗する事になった。



 ロザリンドにも護衛が付いた。
 コルテス侯爵が昨夜急遽手配し、懇意にしている商会から派遣された大柄なその男は、オズワルドと名乗った。

 年齢はロザリンドより10歳上の25歳。
 赤毛に黒い瞳のその男は
『どうぞ、オズとお呼びください、お嬢様』と言い、ロザリンドの手に自ら手を伸ばして、彼女の手の甲に軽く口付けた。