アメリアは親友ケリー・アンが不倫した事が許せなかった。

 それも相手は友人の父親だ。
 結婚したばかりの自分には『人の夫を寝取った女』になったケリーは認められない存在だった。


 運命だの、真実だの、綺麗な言葉で飾っても。
 誰かを泣かせたり、自分が泣いたりする恋を親友にして欲しくなかった。



 だから、暫くは顔も見たくなかった。
 何度も彼女から手紙が来てたけれど、全て無視
した。
 私に腹が立つなら、愛する陛下に言い付けて罰
して貰えばいいわ、とさえ思った。
 だから、彼女が亡くなるその日まで会うことは
しなかった。


 彼女の兄から危篤だと連絡を貰い、亡くなる間際の彼女の手を握りながら、後悔の涙を流した。
 こんな別れになるなんて、思いもしなかった。

 ケリーに対して氷のように頑なになっていたアメリアの心は、小さなオスカーを抱き上げた時、その温もりにゆっくり溶け出した。