「……王太子殿下云々はもういい、ってことか。
 ミシェルも現実を知ったんだな」

「それと、俺はウェインに戻って……
 ロージーと結婚するから」


 ロザリンドがミシェルの話を、のほほんと聞いていたら。 
 急に自分の名前が出て、隣に座るオスカーに引き寄せられた。


「コルテス侯爵達には今夜話すけど、お前には
先に伝えとこう、と思って。
 俺はロザリンドと結婚する!」


 大事なことだから2回言いましたかよ、とオスカーの気合いの入った結婚宣言を、微笑ましく思うグレンジャーだったが。


 彼は昨夜、義父から聞かされた話を思い返していた。


 義父カーネル・オルコットはオスカーが自分の妹の子供、つまり甥だと認めたが、父親に関しては頑として口を割らなかった。

 オスカーの出生について、お前は関わろうとするな、と義父からは釘を刺された。


 時期が来たら、保護者であるコルテス侯爵からオスカーに話す事になっているから、と言われたのだ。
 そこが気掛かりだったけれど。


( ここから先は、俺なんかが口を挟める領分じゃないからな。
 大人の事情でややこしい事になったら、その時は助けるから……ひとりで抱え込むなよ)


 友人としてはオスカーの初恋を、ただ御祝いしてやりたい。

 恥ずかしそうなロザリンドと微笑み合うオスカーを眺めながら。
 
 問題なく婚約から結婚と順調に事が運べばいいのに、とグレンジャーは願わずにはいられなかった。