彼は今辺境の騎士団に所属しているらしいけれど生まれは伯爵家の次男だ。

 そこら辺の平民よりは優良物件だと思った。
 見た目は弟のオスカー程美麗ではないが、決して悪くはない。

 何よりマッチョな感じがミシェル(中身はアヤカ) は、嫌いではなく……
 むしろ好みだった。


 この先、王都の貴族とはご縁がいただけないのなら、ウェズリーに返せるはずも無いお金を借りて、何処かの街へ流れていくより。
 この男に辺境へ連れて行ってもらおう、と短い間に決心して、ダンカンを落とすことに決めたのだ。


 うるうる瞳を濡らして、手を握ってくる王都の美女にダンカンは陥落した。
 女性に慣れてないとは言え、手を握られただけで落ちてしまう簡単な男だ。


 熱く見つめ合うふたりに、ウェズリーは笑いが漏れないように顔を両手で隠し、オスカーは純な兄の女性の好みに呆れながら、無理に微笑んで見せた。



 しかし、これだけは有耶無耶にしてはいけない、とオスカーはダンカンに切り出した。
 ……ここで、5年間自分達兄弟が抱えてきたモノを、有耶無耶にしてはいけない。


「兄上は……、俺のことを恨んで無いのか?」