さっきまでふたりが覗いていた焼きリンゴの露店前までどうにか出られたが、既にコルテス兄妹の姿はなかった。
 慌てて周りを見回すと、露店と露店の間に路地があった。


 馬鹿者と思われ続けたウェズリーだったが、今日の彼の勘は冴えていた。

 彼が狭い路地に駆け込むと、そこには背後にロザリンドを庇って、付けてきた男と対峙しているオスカーが居た。


 学苑では大人びたオスカーが、背丈は同じでも
身体の幅や厚みで一回り違う男と向き合っている様は、彼を17歳相応の華奢な少年に見せた。


「オスカー!警備隊呼んでくるから!」


 ウェズリーの叫びに男が振り向いた。
 オスカーとウェズリーの2人がかりで立ち向かっても、男には勝てない気がしたので、警備隊の名前を出した。
 これで男が逃げてくれたらいいのに、と。