可愛さとあざとさの境目は微妙だ。
 それは見せられたこちらの気持ちで左右される。



 高等部2年生の学年末、夏休みが始まる2日前。
 ウェズリー・ノース・ラザフォードはミシェル・フライに失恋した。


『これから王太子殿下の恋人になるから』という、とんでもない理由で。
『転生』だの、『マンガ』だの……
 わけのわからない話は置いておいて。


 可愛くて可愛くて、その笑顔が眩しくて夢中に
なった恋人なのに、振られて離れてみたら
『あれは一体何だった?』と思い始めた。


 可愛いと思っていた彼女の全てがあざとく見えたのだ。
 2年続いた熱が冷めて、さっき見かけた時はスルーしようと思ったのだが、ミシェルが手にしている大きなバッグが気になった。


 祭りのこんな人混みの中で、あの荷物は悪目立ちすぎる。
 わざわざ襲ってください、と言っているようなものじゃないか。