まるで自分の様だ、と思った。
 本当は出来ないことの方が多い男なのに、出来る男の振りをしていただけ。
 ずっと周りを偽って来たが、きっと今夜で俺の
ボロボロの仮面は外れてしまう。


 だからその前に。
 ギリギリ最後に君には、カッコいい俺を覚えて
いて欲しいから……
 ロザリンドを祭りに誘ったのだ。



 無事にダンカンとの対決を終えて、ミシェルと
夜を過ごすこともなく、コルテスの邸に戻れたら
『婚約して欲しい』と、ロザリンドに打ち明けるつもりだったが。

 今朝になったらちゃんと言えるのか、その自信さえなくなった。
 胃の辺りがシクシク痛んで、朝食もスープを3匙手をつけただけ。


 ダンカンの企みから逃げられなかったら、多分
もう会えない。
 スキャンダルを起こした義理の息子は、養子縁組取消の手続を終えるまで、何処かに押し込められてしまうだろう。


 そのままウェイン家に戻されることなく、自分もまた王都から離れた辺境に送られて、もうロザリンドに会うことは叶わなくなるのかもしれない。



 だからその前に。
 これが最後になるかも知れないから。


 ロザリンド、君の時間を俺にください。