グレンジャーに合わせて彼の義父を『親父殿』と呼ぶだけで充分だ、と思おうとしていた。

 自分を産んだ女性の正体も調べることはしない。
 コルテス侯爵夫妻を親として、ロザリンドを妹として、オブライエンとウェインの両家、今の家族を大切にしていこう。
 ……彼はそう決めていた。


 オスカーはまだ真実を知らなかった。 
 母親がカーネル・オルコットの妹だ、とは。
 父親が前国王陛下だった、とは。


 間もなく成人の18歳となるオスカー本人が関知しないところで、自分の存在が周囲をざわつかせ始めたことも。

 義妹を守るためとは言え、ランドール王子殿下に暴行を加えながら、何のお咎めも下されなかったのには、そうなる理由があったからということも。



 またこれから先、アーノルド王太子殿下が自分に絡んでくるのは、国王陛下がオスカーを王弟だと認めて、自分が王位継承権2位に浮上するからとは想像もしていなかった。