それでも側妃や愛妾を持たず、謹厳実直と名高かった父が不惑の年齢を過ぎて迎えた『初恋』を
責めることは彼には出来なかった。


 しかしながら王太子の立場上、身重のケリーを
側妃に迎えたいと言った父を説得し、母からふたりの関係を隠すことに腐心した。


 自分の敵と認識した者に対しては苛烈なまでの
対応をする事で有名な王妃陛下が、息子の王太子と同い年の娘が産んだオスカーの存在を許すとは到底思えず。
 クライド達は王妃陛下が亡くなるまでは彼女の目の届かない田舎で、オスカーを育てることにしたのだった。



 父親の国王陛下が与えた名前は、
 オスカー・レイ・エリオット・ルーランド。
 この先はオスカー・ウェイン・マーカス。
 その後はオスカー・オブライエン・コルテス。


 彼は父親の国王陛下が亡くなり、王太后陛下が世を去った12年後まで、マーカス領主ウェイン家の三男として過ごした。


 国王陛下から受け継いだ紫の瞳は、瞳の色を変えるのは赤ん坊には危険だ、とそのままにしていたが。
 生来の金髪は伯父カーネルの魔法で黒く染められていた。