ケリーは今際の床に駆けつけてくれたアメリアの手を取り、置いていく息子をお願いします、と。
 その言葉のみを息が絶える直前まで、何度も何度も繰り返した。



 ケリーの兄のカーネル・オルコットは魔法省の
次期長官になるだろうと噂されている非常に多忙な男だったし、未婚なので甥である赤ん坊のオスカーを育てるのは難しい状況だった。


 亡き親友の願いに応えたかったアメリアは新婚間もない夫のクライド・オブライエン・コルテスにオスカーを養子に迎えたい、と願い出た。


 中等部の頃から交際していたクライドとアメリア、アメリアの親友ケリーと現国王陛下のローレンスを加えた4人で、学生時代はいつも行動を共にしていた。


 クライドにとってもケリーは大切な友人だったので、彼女の子供は可愛いし、行く末も気にかかる。
 またそれに加えて、この先の政治的な意味で切り札になりそうなオスカーを養子にして迎える事に打算が働くのも、貴族ならば仕方なかった。