頭脳明晰と言われているオスカーなのに、何故か考えがまとまらなかった。
 仕方なく、もうこうなったら行き当たりばったりで、とにかく指示メモの3点を厳守することにした。


 その日の放課後、オスカーは学舎の待ち合いホールでロザリンドを待っていたところ、学苑の事務担当の女性が『預かっておりました』と、封筒を差し出してきた。
 御礼を言って受け取り、中の便箋を開いてみれば……


『明日の祭りで会いたい
 スワンの泉前で、19時に待っている
 俺はフクロウの仮面をつけている
 俺の知っている店で食事をしよう』と、綴られていた。


 ダンカン・ウェイン・マーカス、兄からの呼び出しだった。
 ここまでは想定内なのに、不安になったオスカーはホールを飛び出し、魔法科の教室に駆け込んでまだ残っていたグレンジャーを捕まえた。


「明日、18時に!
 お前の家に行ってもいいか?」

「お、おう、オスカー。
 わかってる、って。
 今まで何回約束してんだよ」


 オスカーはグレンジャーに去年から何度も
『仮面祭りの日の18時に髪を染めてくれ』と約束をさせていたらしい。