ミカミとして、その夜に何が起こるのかは知っているはずなのだが。
 このところ、その事については自信がなくなってきている。



「今日もローはグレンフォールのアビゲイル様と会っていたようだな?」

 それまで黙っていた義父がオスカーに尋ねた。
 義母からの圧から救おうと、話題を変えてくれたのだ。

 義父はロザリンドの事をただひとりローと、呼んだ。
 その事がはっきり口に出さなくても、娘を愛していることを表していて、オスカーはそんな義父が好ましい。


「前回は先方からのお招きで、今日はローからお伺いしたんだったな?
 あの方とは友人ということなのかな?
 オスカー、お前アビゲイル様とは同級生だったな」

 義父が絶妙な話題を出したことで、義母の顔も嬉しそうな表情に変わった。


「ロージーが王太子殿下のご婚約者のご友人になれたのかしら?
 アビゲイル様は、どのような御方なの?」

「……私は同級生とは申しましても、さほど交流はありませんから。
 美しくて頭の良いアビゲイル嬢は王太子妃殿下にふさわしい公爵令嬢だ、と苑内で噂に聞いておりますが」