今、義父は義妹の噂が落ち着くまでは、と義母を言い聞かせて届け出を保留している状態だ。


 借りがあるというのは、デビュタントの夜に
ロザリンドが鬼畜王子のランドールに私室に連れ込まれそうになった件だろう、とオスカーは考えた。


 それまでの第2王子の所業を知っていながら、放置していた責を追求された国王陛下を庇ったのは、愛娘を汚されそうになった被害者側のコルテス侯爵だったので、以降の国王陛下は彼に強く出られなくなったからだ。


『これが貴族のパワーゲームに勝つ、ということだ』

 そう得意そうに語るコルテス侯爵を家族は冷めた目で見ていたが、オスカーにとってはとにかくロザリンドが無事であったことが喜ばしかった。


 ランドールを倒したのが王城の廊下であったこと。
 倒れている第2王子に馬乗りになり、彼を締め
上げている義妹。

 その場の目撃者がオスカーの他に多数居たこと
からロザリンドの貞操が守られた事を疑う者は
居ない。