「……俺……」
やっとのことで残っていたわずかな本能で後ずさり、そして肩を掴んでいる綾部の手を振り払うように走り出した。
「榊!」
俺を綾部の声が追ってきたけれど、それに構う余裕があるはずなんてなかった。
俺の足に絡みついてくるなにもかもを振り切るように、一心不乱に走り続ける。
そしていつしか辿り着いていたのは、4日前に自殺未遂を起こした橋だった。
まるで見えないなにかに導かれるように、俺はのろのろと緩慢な動きで柵を越える。
バスケでしか生きている価値を示せなかった。
バスケをしている自分でしか、だれの目にも映らなかった。
それなのにたったひとつの意味を失った俺はただの抜け殻。
幸せになりたいと願っていたわけではない。
そんな大きなものを望んだりはしない。
ただ、存在を認めてほしかった。それだけなのに。
俺の居場所なんて、どこにもない。
俺の生きている理由なんて、なにもない。
なにもかもがどうでもいい。
世界が俺を拒むなら、もういっそ、すべて捨ててやる。


