【完】永遠より長い一瞬を輝く君へ





今日の放課後は、俺の家で夕食を食べることになっている。

今日は小坂と一緒に“くらむちゃうだぁ”というものを作るらしい。

食べたことはないけれど、小坂は『榊くんもきっと好きだよ』と言っていた。


本当は家まで一緒に行くはずだったけれど、小坂が担任に呼び出されたため、俺は先にスーパーで食材を買い出ししていることになった。

材料をメモした紙が事前に渡されている。

女の子らしい柔らかくも綺麗な字が並ぶメモを見つめながら、一人で歩き出す。


学校を出て間もなく、ひとりで帰るのが久しぶりだということに気づいた。

ここ最近はずっと小坂と一緒だったから、隣を歩く人がいないというのはなんとなく物足りないというか吹きつける風が冷たい。


街中を歩いていると、公園に通りかかった。

車の走行音ばかりだった空気に賑やかな声が割り込んできて、何気なくそちらに視線をやると、高校生くらいの男たちが公園の真ん中でバスケットゴールを囲んでバスケをやっていた。


知らず知らずのうちに俺の足は止まり、そちらに目が釘付けになっていた。

バスケ部の集団だろうか。

在りし日の自分の姿が重なる。


自分の中でくすぶっていた劣等感が刺激され、足の裏に根が張ったように動けない。

賑やかな声とは対照的に、俺の心には暗い影が差す。


……けれど、いつまでもこんなんじゃだめだ。克服しないと。


仄暗い感情を立ち切るように頭をふるふると振り、重い足をむりやり引っ張るようにしてその場から離れようとした、その時。


「あれ、榊?」