華奢な体のわりに、よく食べる。
愛用のお弁当箱は、クラスの女子のそれよりもひとまわりどころかふたまわりは大きいと思う。
好きな人、いるのか。
小坂はどんな男を好きになるのだろう。
世界一かっこいいって、どんな奴だよ。
だれだとしても、俺とは正反対の男だということだけは明白だ。
そんなことを考えていると、小坂がかしこまるように箸を置いた。
「それより、明日からお休みだよ」
「そうだな」
「ということで、これからの予定を発表するね」
そして小坂は、「じゃじゃん」と言ってポケットからなにかを取り出す。
それは、手のひらサイズの黄色いノートだった。
そこに書かれているものを小坂が読み上げる。
「まず明日は花火大会に行きます。それから明後日は映画を観に行きます。どうかな?」
「いいと思う」
「ふふ、楽しみだなぁ」
足をぶらぶらと揺らし、空に音符を飛ばしている小坂。
小坂はいつも明るくて、人生が楽しそうだ。
そんな小坂とは対照的に、俺の心はなぜか晴れないまま。
いつもより少し奮発して買ったサンドイッチを食べながらも、喉の奥になにかがつかえているような感覚を流し込めないでいた。


